2012年12月22日土曜日

『Running Lean -実践リーンスタートアップ 刊行記念 著者アッシュ・マウリャ氏 来日特別セミナー at Yahoo! JAPAN』ノート - 質疑応答 (4 / 4)


2012/12/17に開催された『Running Lean -実践リーンスタートアップ 刊行記念 著者アッシュ・マウリャ氏 来日特別セミナー at Yahoo! JAPAN』のノートの質疑応答部分です。



◆質疑応答

Q.
日本でワークショップをやる予定は?
翻訳者である角征典氏のワークショップは素晴らしかったが、マウリャ氏のワークショップはそれと全く同じものか?
そうでない(同じものではない)としたら、日本で誰かにやってもらう予定などはあるか?

A.
角征典氏からは翻訳の過程で的を射た質問をたくさんもらった。
その中で自分として内容を詰めていったり、リファインしたものもあった。
彼はエッセンスを捉えていて、だから(彼のワークショップは)同じものだと認識している。



Q.
「書籍のMVPがワークショップ」というのは、ぱっと見た感じわかりにくいと感じた。MVPを見つけるコツというのは?

A.
MVPでは「課題が何か」をきちんと把握することと、「それに対して正しいプロダクトやソリューションを出せるか」を確認しなければいけない思う。
ここは人によって違うと思うが… (これを踏まえて)自分の場合は「デモをできるかどうか」。
(MVPの定義に対して)少し厳密に考えるようにしている。

ここでいうデモとは、「デモをやることによって需要の有無を確認ができる」という意味でのデモ。
また、「デモをやることによってバリューを確認できるので、これを元に考えるといい」と提言もしている。

「バリューを提供できているかに注意すればいい」ということは、「どういう形で提供するか」ということをそんなに気にしなくていということ。
コードでなく全てを人がやっても、充分バリューは確認できる。



Q.
Running LeanのメソッドとLean Canvasは既存の企業においても有効?
有効ならどういった点に注意すれば?

A.
いろいろなビジネスの形態があると思うが、Lean Canvasの考え方は全てに有効だと思う。
事業の立ち上げだけではなく、プロダクトを新たに出すところなど。

「カスタマがいるか」「市場はどこにあるか」というのは一番リスクが多いところだと思うので、そこを注意すればいいと思う。
これらはそれを確認するための1つの有効なやり方だと思うし、そこさえ確認できれば後は容易に埋めていくことができる。

あとは、プランを完璧にしようとしすぎないこと。
チーム内で一緒に作るとしても半日。時間をかけるとしても、1日以上はかけないようにする。
以降はとにかく外にでて実際のデータの回収。
そういうことをできるだけすぐやったほうがいい。



Q.
日本という市場と、日本のスタートアップに対して考えていることは?

A.
日本に長くいたわけではないので、日本の市場やスタートアップについて特に意見があるわけではないが… 何人もの日本人のスタートアップの人とは話しをしているので、その辺りの意見や認識は持っている。

この2年、世界中を飛び回って世界中の国の人と話をした。
どこであっても、アントレプレナーとしてのスピリットや気持ちは同じだった。

一方で文化的な違いはある。
失敗に対してどこまで受け入れられる文化的な環境なのか。特にこれは大きいと思う。
周りの人から「そんなことやめとけ」と言われる文化か、そこまではでない文化か、というのはある。

できるだけ早期の段階で「リスクがどこにあるのか」というのを見極め、そのリスクを緩和させていくことが今日の話の1つのポイント。
必然的にリスクが減ってくるので、どの文化でもやりやすい手法であると思う。



Q.
プランをピボットするのかそれともそこで中止するのかの見極めがすごく難しい。
何かそこで大切にしているポイントは?

A.
これはすごく難しい問題だと思う。判断を迷うところだと思う。

自分個人でやるようにしているのは「成功というのはどういうものなのか」きちんと定義すること。
「5年後にどういう成功を収めるべきである」とか「どういう形を持って成功とする」であるとか、そういうものもあっていいけど、それだけではなくもっと短期的に。
「3ヶ月とか6ヶ月先に目指すところ」をきちんと定義できているかということと、それに対して定期的に確認するということ。
月に1回でも2回でもいいので、目指すところに対してどこまでいけているか、というのをきちんと測定する。
そういうことをやっていると「きちんと正しい方向に進んでいる」であるとか「これはどこにも向かっていない」であるとか、確認することができる。
もちろん上手くいっていないからといって経験や学びができないわけではない。
そういうことを繰り返しやっていると「これは方向的に向かっていない」とか、そういうサインが見えてくる。
こういう形で短期的に確認し続けるというのが1つのやり方。

もう1つやってしまいがちな傾向として、1回Experimentしてみて失敗したから「じゃあ変えよう」として失敗するたびに変えるというというのがある。
これではいけない。ランダムに適当にピボットというのはよくない。
失敗したのであれば、失敗の根本原因(Root cause)というのをきちんと見極めたうえで判断しないといけない。
失敗の原因さえ分かっていれば… 分かった上でのピボットであればいい。
ピボットはきちんとした根拠のあるものでなければいけない。



Q.
Experiment(Learn-Build-Measure)という流れの中を一通り回してみて、Learnの箇所は難しいと思った。
「正しい学びなのか間違った学びなのか」という判別が自分ではなかなかできない。
迷ったときに何が正しい学びなのかということを見抜く方法があれば教えて欲しい。

A.
私はLearn-Build-MeasureのサイクルをExperimentと言っている。これは科学的な言葉を"あえて"使用している。
なぜ科学の言葉を使っているかというと、「どんな仮定であっても、間違ったことを証明できる可能性がある仮定でなければいけない」と思うからだ。
「この何かを1ヵ月100ドルで提供する」と言った場合は「それに加入するかどうか」。具体的な数値でないといけない。
「この何かを良いと思ってくれるかどうか」だけだと、その仮定が間違ったという証明すらできない。
そうではなく、Experimentが成功か失敗かはっきりするような形の仮定を組むことが重要。

「100$じゃなくて80$-90$だ」となるかもしれないし、もしくは「5$-10$だ」とか。
後者の場合はビジネスとして成立しないということが分かる。
きちんとした仮定を持ち、それで判断すること。



Q.
今回の事例ではまずブログがあったということで、ある程度リーンスタートアップに興味がある人(カスタマー)がついていたと思う。
そうでない場合に、アーリーアダプターがいなかったのか仮説検証の方法が間違っていたのかを判断する方法は?

A.
「アーリーアダプターがどこにいるかわからないとき、どういう風に見つけていくか」という質問だとしたら… 最初のところではそこが一番リスクが高い。見つけるのも見極めるのも大変。
たしかに今回の事例ではブログというベースがあったが、それ以外のプロダクトの立ち上げでも使ってみたことがある。
そのときの例でいうと、想定するカスタマーセグメントを幾つかの切り口で作り、その人達に使ってもらうことで見極めようとした。
まずは限定した形で始めて、その中で本当に限定した人数からインタビューなどをした。
「まず規模を小さくして、そこからスケールアップして規模の拡大をできるかを考える」という形で始めた。






Ash Maurya様、O'Reilly Japan様、Yahoo! JAPAN様、ありがとうございました。

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