2012年6月24日日曜日

『【shibuya meets tech 4】アナタに一番合うアイデアの生み出し方、 育て方、ゴール』ノート2



2012/06/07に開催された、『【shibuya meets tech 4】アナタに一番合うアイデアの生み出し方、 育て方、ゴール』ノートの真ん中の1/3です。ノートパソコンを入手してからはメモも随分と楽になり、分量も増えました。






20120607 shibuya meets tech vol. 4



講演者

Appcelerator Inc. 増井雄一郎氏
株式会社ユーザーローカル 閑歳孝子氏

司会者
渋谷lab 鈴木氏

主催
渋谷lab

会場
Lightningspot



◆theme / アイデアをシンプルにする方法

増井
「『でてきたアイデアをシンプルにするのが難しい』という質問があったのですが」

閑歳
「よくありますね」

増井
「僕はそんなに複雑には考えられないので、あんまり複雑にはならないですね」

閑歳
「私はシンプルにしないといけないと思っていて …画面上のボタンの数も含めて、ぱっと見て分からないものとか、使われない機能は無くても同じだし、開発の時間ももったい気がします。目に見えるもの全てすぐ分からないと意味がないと思います。

twitterなんかの名言botでもよく言っている『作るには技術が必要、削るには思想が必要』という言葉が好きで、1回作ってしまうと削るときには作るとき以上のすごいパワーが必要なんです。

で、特にお客様がついていると削った後にすごいクレームが来るので、作る前に必要かどうかを精査して、8~9割が欲しいというものは確かに無いとまずいと思いますが、1~2割が欲しいといっているものは思い切ってきったほうがいいと思います」

増井
「仕事だとその1~2割って声が大きかったりするんですよね」

閑歳
「ユーザの人が言っていることと本当のニーズって別だったりするんですよね。言っているものと本当に欲しいものが違うことはよくあって、 …Zaimも最初はiPhoneのキーパッドを使っていたのですが、途中から自作の電卓にしたんです。そうしたら『元に戻してほしい』という声がたくさんあって

…で、いろいろ考えていくと、そのボタンが前より小さくて押しにくいというのが本質的な声で
前のキーパッドがよかったわけではないんですね。だからそれを大きくして、それでそういう声はなくなったんですけど。

そのままそのとおりを聞くのはたぶん間違いの場合が多いんじゃないかな?と思います」

増井
「僕が作るときは自分用なので、他人の声が聞かないんですよね。他の人の意見を聞くと複雑になりがちなので、そこで聞かないというのはある意味1つの方法だと思いますね」

閑歳
「それは使う人が増井さんに合わせてくれるんですよね?」

増井
「そうですね。僕は使ってもらうことが目的ではないので、ユーザーが増えるよりも自分や一部の人が使いやすければいいので」



◆theme / 上から目線でも就職活動ってできるし、相性って大事

増井
「さっきの増井予約システムも、実はアメリカから日本に帰ってくるときにホームページで仕事募集ってやったらオファーが来て。で、オファーをくれた会社に一斉メールで、『僕の予定はこうなってますので、早いもの順で面接に来て欲しい日をサブミットしてください』って、すごい上から目線のメールを送りまして」

閑歳
「もちろん他社は見えないんですよね?」

増井
「他社は見えないです。見えるようにするのもそれはそれで面白いし、予定年収までサブミットしてもらうとかなりえげつない感じがしていいんですけど …増井予約システムは完全に自分目的で、他の人の考える余地がないのでシンプルになりました。

知っている人には『そんな上から目線の就職活動はない』といわれましたね。

それが駄目で、『アホなことと言う会社は入っても続かないので、そういう意味も込めて作っています」

閑歳
「相性が分かるのでいいと思います」


◆theme / どこから作りはじめるかと、どこでモチベーションが下がるか

増井
「『始めの一歩』という質問がありますが、Zaimはどこから作り始めました?」

閑歳
「まず画面を紙ベースで全ページ書いて、その後にログイン前のページを作ったんですけど、ちょっと欲張ってauthを自作したんですよ。そこはすごい大変で …twitterみたいにサーバとやりとりするみたいなものをいきなり作り始めて、そこで心が病みそうになったんですけど、そこを乗り越えてからはどんどんページができていくのが楽しくて仕方がなくて」

増井
「僕はもう完全に技術始動なので、HTMLより何よりも、技術的に詰まりそうなところのロジックだけ書いて、とりあえず技術検証が終ってから作り始めて …デザインは最後にデザイナの人にお願いして作ってもらうとか、最後に当てはめることが多いですね」

閑歳
「ものづくりはどのときが一番楽しいですか?」

増井
「技術的に難しいことが分かっているから書き始める、ということが多いので …始めの1~2週間が一番楽しいですね」

閑歳
「私は逆で、自分が解決できなさそうな問題を見ると『できないんじゃないか?』と不安になるんですけど …最後の99から100にするところは時間がかかるので心が折れるじゃないですか?完成度を上げていくところとか、出来上がることがもう見えているし、私はそこが大好きなんです」

増井
「僕は出来上がることが見えるとモチベーションがすごい下がるんです。」

閑歳
「それはすごいエンジニアの考え方ですよね」

増井
「そうですね。プロトだけ自分で作って売ったり、他の会社と絡んで仕上げてもらったりするのが、自分としては一番楽ですね」

閑歳
「今回、真逆で面白いですね」

増井
「技術ドリブンなのか、つくりたいものドリブンなのかでけっこう違いますね」



◆theme / ゴールとそこへのアプローチ

増井
「次は『ゴールの設定』という話ですね」

閑歳
「一番始めに言ったことと被ると思うんですけど、何が目的なのかといったところに近いですかね?」

増井
「僕はゴールは全く決めないで作り始めるのですが …あるサービスのAPIが使いにくくてそのことをエヴァンジェリストに話たら『そんなに言うならお前が作れ』といわれて …接続するところのAPIを作ったところで飽きてしまって、最終的にはアプリじゃなくてライブラリだけがリリースされたりとか。

ゴールを設定しないので、途中で身近なところをゴールにしてしまうことが多いですね」

閑歳
「それは仕事とかだと大変じゃないですかね?」

増井
「仕事はゴールがはっきりしているので、モチベーションが下がったからと言ってやらないわけにはいかないのですが …嫌々やっていることが多いですね。

開発中のあるサービスでは、技術的に難しいところは私、それをサービスにするためのフロントの調整部分は人を雇って、という大人の解決方法を模索しています」

閑歳
「私もそうなんですけど、そういうのが好きな人は絶対にいるので、そこがうまく組み合わせればお互いハッピーですよね。私は逆に絶対に超えられない壁があるとすごいストレスになるので。

今やっていることで言えば、使ってもらわないと意味がないところががあり、指標を持とうかなと思っていて、数字をみるようにしています。自分のサービスはダウンロード数やランキング等を毎日届くメールでずっとウォッチしていたり、AppStoreのランキングもいろいろな自分の知っているサービスのランキングも大体見ていて、結局どういうタイミングで上がっているかとか …家計簿って『心を新たにして』ってことで3月とか12月の末とかにみんなダウンロードしていて。だんだんとみんな諦めていくんですけど …後は『来月から頑張ろう』ということで月末とか。

そういうのを見て、『これはこのタイミングで出したほうがいいかな?』というのを最近覚えて …工夫していくのがけっこう好きです。全体的なゴールはあんまりないんですけど、そういう感じでやっています」

増井
「僕はほとんど自分用のアプリなので、自分が作れるようになったところがゴール。最近はもっと酷くて、とりあえずコンソールから使えるようになったらゴールだったりするので …全く人にお見せできるような状態でないところがゴールだったりします」

閑歳
「コードの美しさみたいなところはどうですか?」

増井
「動くことが主体だったりするので自分でしか使わないものは汚いですが、PukiWikiやMobiRubyみたいに人に見せるものは相当気を使って書いてます。

MobiRubyは英語圏でリリースしていて質問も英語なので …だったらコードで分かってもらった方が楽なので、質問が来ないように綺麗なコードを書いています。MobiRubyは設計がなかなか決まらなかったりして、何回も書き直したりしています」

閑歳
「それは"楽しい"みたいな感じなんですかね?」

増井
「かなり楽しいですね。MobiRubyは自分の中でも特殊で、海外での自分の認知度を上げて今後の仕事をしやすいようにしようという大きな目標だったり、技術的にも面白そうで自分でできそうな範囲のものだったりという、2つがあったんです。また、ホームページを先に作るなどのいろいろな人に認知してもらうためのしかけもゴールの1つとしてやっている、という点でも特殊ですね」

閑歳
「ゴールじゃないかもしれないですけど、ユーザの声を重視したいと思っていて。

アップデートすると、使い方とか、不具合とか、ありがとうございましたとか、1日30とか40件とか問い合わせが来るんですけど、そういうのでユーザがどう使っているのを知ることがきるんです。逆に来ないと、使ってもらえてないのかな?と不安になったり。

ただ、先ほども言ったように、意見を真に受けて聞くとあまりいいことにならないと思うので、どんなに言われても、本当に何が必要なのかは精査した方がいいと思います。」

増井
「『自分が手を引く』こと、『自分がいなくなってもチームが動く』ことがゴールというプロジェクトもあって、そうすると、ある程度完成させて手を引くことゴールになります。プロダクトを作るところがゴールじゃないということもありうるということです」

増井
「Zaimをサービスとして続ける限り、自分が関わり続けないといけないじゃないですか?そこら辺はどう考えています?」

閑歳
「私はうれしいなー、という風に思っているんですけど。作ることが一番好きなので、それをやりたいというのはあるんですけど、ずっと伸び続けてユーザが一杯になったときは、『自分が自分が』ではなくなってくるのだと思います。

サービスのことを考えると『違う体制とかも含めて考えなければいけないのかな?』と自分ではうすうす考えていて。私は金融系のこととかそこまで分からないので、そういう人がやったほうがいいのであれば、そういう人に任せたほうがいいのかも、とか最近考えるようになりました。」

増井
「場合によっては組織化とか?」

閑歳
「自分のことより、ユーザに良く使ってもらえるか? ということを考えた方がいいかなと思っています」

増井
「アプリケーションは配布しておしまいですけど、webサービスは止められないじゃないですか?Webサービスは継続することを考えないといけないので、そういった意味でゴールの設定が難しいですよね」

閑歳
「難しいですね …やめるときがゴールですね。一種のゴール」



◆theme / モチベーション

増井
「僕は飽きるとやめちゃうので …モチベーションが低くなった時点でやめたり、その段階で手が引けるようにしていたりとか。絶対にモチベーションが続かないことが分かっていたプロジェクトでは組織化させたりとか… モチベーションを高くしようというよりは、低くなったときにやめられるようにしよう、ということの方が多いですね」

閑歳
「チームビルディングなんかも含めて、一番始めに設計するってことですよね」

増井
「はい」

閑歳
「私は、自分に自身がないというのが大きくて。自分の中にすごい危機感があるんですね。

…『大丈夫なんだろうか?』というところなど、現状に満足できていないところがすごくあって、それがモチベーションの1つになっています。ものすごく優秀な技術者の方がいる一方で、『自分はなにもできないな』というところがすごいあるので、それを少しでも克服するために『人より頑張らないといけないのかな』というのがあります。

ちょっと関係ないかもしれないけど、頑張っている異業種の人を見るといいと思います。自分からは遠い業種だけど、とても頑張っている人を見ると、『自分ぜんぜん頑張ってない。さぼっている』という気分になるので、そこでモチベーションを保てるという …同業種だと『自分ってこんなにできないんだ』となってしまいリアルな感じになってしまいます」

増井
「僕は単純にコードを書くのが好きなので、モチベーションとか考えたことがないんですね。高校生くらいまで辿ってもコードを書かない日というのが思い出せないくらいコードを書いていて。
そこには何かに頼るモチベーションは無くて、単純にコードを書くのが好きで …そういう意味では参考にならないんですよね」

閑歳
「そういう意味では天職みたいな…」

増井
「そうですね。コンピュータ以外のことはここ20年くらい何もやっていないですね」



◆theme / アイデアを形にできる人とそうでない人の違い

増井
「『アイデアを形にまで持っていける人とそうでない人の違いというのは何?』という質問があるのですが …1つは手を動かすかどうかなんですよね、最終的には」

閑歳
「『これは面白い』というものがあるのに、出さないのは逆にもったいないと思います。そんなに欲しいと思っているのに、出さないまま途中で飽きたり日の目を見ないのってもったいないじゃないですか」

増井
「あとは、けっこう自信がないみたいで …『自分のアイデアを自分としてはたいして面白くない』と思っていたり『これくらいのことはみんな思うでしょ?』的なところで、実際に形にしないというケースがけっこうあるみたいですね」

閑歳
「周りの人が賛同してくれたり、もうあるよっていうことがすぐわかるので、twitterでつぶやいたらいいと思います」

増井
「それはありますね

(中略)

実際に行動するかしないかが、形にできるかどうかの差である、という気がしますね」






増井雄一郎様、閑歳孝子様、渋谷Lab様、Lightningspot様、ありがとうございました。


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