2012年5月29日火曜日

『スタートアップのTOPが本音で語る、サービス・チームの作り方、稼ぎ方』ノート

2012/05/22に開催された『スタートアップのTOPが本音で語る、サービス・チームの作り方、稼ぎ方』のノートです。NG箇所は省きました。あと、個人的に公開しない方がいいと思った話も省きました。

なお、パネルディスカッションは会話のようになっていますが、これはあくまでノートです。テープ起こしなどではないので、そこはご了承ください。



◆パネル参加者


株式会社クラウドワークス 代表取締役 吉田 浩一郎 氏
『crowdworks』


株式会社JX通信社 代表取締役 米重 克洋 氏
『vingow』 


株式会社trippiece 代表取締役 石田 言行 氏
『trippiece』


株式会社Labit 代表取締役 鶴田 浩之 氏
『すごい時間割』



◆パネル参加者紹介


◇吉田氏

・自己紹介
  • この中の四人では格段に最年長
  • 学生時代に劇団を主宰していたが、契約のサインミスで多額の借金を負った
  • 契約の世界を知る為に社会に出た
  • 成りたい姿は鈴木俊夫。クリエーターに対するプロデューサー


・クラウドワークスとは
  • クラウドソーシングのためのサイト
  • 不特定多数の人々を募って発注をするサービス
  • 週三十時間以上(フルタイム)の仕事が60%以上ある
  • 全国のエンジニア・デザイナーに一時間単位で受発注
  • 非対面の案件に特化
  • 時給制
  • 発注者は無料!



◇米重氏

・自己紹介・チーム紹介

  • vingow開発チームの平均年齢は22歳
  • 一番下は20歳
  • 社長は23歳


・vingowのコンセプト
  • 新聞が創刊されてから500年。時代に合った新しい形。500年目のイノベーション
  • 自動的にテレビや新聞のようにスイッチを開く、紙を開くだけ
  • 検索クエリや質問といった時代は終わりにしよう
  • 集めた情報を、何か新しい知識として蓄積して有効活用できる
  • 電車でクリップして、家に帰ってから見ることができる。情報収集の新しい形
  • 我々はブレインメディアと読んでいる


・vingowの機能
  • 自分の欲しい情報を欲しいものは大きく、そうでないのものは小さく表示
  • 新しい情報は上から表示される
  • キーボードがいらない
  • 全ての記事を全文解析してタグ付けする


今は8000人くらいが使っている。



◇石田氏

・trippieceについて

旅に行ってみたい。
ただ、けっこう遠かったりするし、一人でいくのは寂しい。物足りない。不安がつきまとう。
自分で企画するのも面倒。
ツアーは、けっこうみっちりしていて高い。

行きたい旅に行く仲間を作って、それを実現するサービス。
それがtrippiece。
旅を共有して、出会った仲間と旅に行く。
帰ってきてから、写真や思い出を共有できる。


・ポイント
  • 誰かと行った方が心に残る。
  • 1人じゃなかなかできないものをやる(スカイダイビングとか)
  • ちょっとテーマ性のある旅が人気


・実績
  • 35万円(相場は50万円)の企画に一日で15人が集まり、最終的に40人が参加した



◇鶴田氏

・すごい時間割について
  • 何がすごいのか? → 時間割を簡単に管理できる
  • それぞれのコマに講義データを登録できる
  • 各コマには出席など、講義にはテストの日程などを登録できる
  • どんな人がその講義を受講しているかの一覧が出てくる。そういう興味を満たすことができる
  • 友達が同じ時間に何の講義をとっているのかを確認できる


・名前の由来
  • エンジニアがつけていたフォルダ名をそのまま使った


・テーマ
  • 一人でも便利に使える
  • みんなで使うと楽しい


時間割の共有のためのアプリだったが、暇な時間の共有ができる。
作ってみてそういうことが分かった。



◆パネルディスカッション

◇サービスを立ち上げるきっかけ


吉田「技術系の何の体験をしても向いてないことが分かったから。これが一番大きな原体験。漫画は無理。劇団・カメラ・映画とか …アングラなものもやったが、ピンとこなかった。

ただクリエーターはめちゃくちゃ好き。だから、宮崎駿に対する、鈴木俊夫。そして、インターネットとともに生まれたクリエータがエンジニア。コレに対するプロデューサーになる」


司会「どうやって踏み出せばいいのでしょうか?」


吉田「20歳で会社をやって潰した、福崎さんという人がいる。彼はとりあえずやってみた。

…まずやる、出してみる、間違ってみることが重要。(私は)それで向いていないものが分かった。

ふと思ったことを無責任に。若いうちは後で取り返しがつく」


米重「元々は航空会社がやりたかった。中学に入ってから航空業界に興味を持った。

日本の航空業界は運賃がとても高い。海外ならもっと安い。なんで日本はそれだけ高いかといえば、それは規制と寡占市場や無駄な空港をつくるための費用。それを解決したい。

で、その為に国会議員・官僚になるより、航空会社をつくったほうが早いのではないか? と考え、そういう道に行きたいと思った。

今は航空会社ではないが、同じような問題意識を持てる業界としてメディアを選んでいる。今の会社は仮想通信社という指向。通信社事業をイノベーティブにやりたい」


石田「三つポイントがある。

まず、父と祖父を超えたかった。

次に、小さいころから事業に興味があった。価値を提供してお金をもらうのが好きだった。

3つ目。バングラデシュで原体験をツイートしたら、その場でツアーを作ることになった。日本に帰ってきてから学生に聞いたら、非常にニーズがあることがわかった。

そのときのアイデアで企業してみようと思った」


鶴田「13歳のときにネットにはまっていた時期があった。ある日突然、毎日いっていたサイトが閉鎖され、行き場を失った。で、自分で場所を作ったら皆が移住してきてくれて、最終的には15万人くらいになった。人を集めるのが自分にあっているのかな、と思った。

自分が作ったところに来てくれるのがすごくやりがいがある。

そして自分の興味が広がっていった。インターネットという数十万人の人にサービスできるという可能性を肌で感じていた。そういう原体験があった。まだまだ途中」


吉田「石田さんにきいてみたいのだが、旅行の手配から設立までには距離があるような… それが会社設立につながるきっかけは?」


石田「もともとはNPO法人をやっていた。そういうなかで、自分にしっくりくるものをやりたいと思っている中でたまたま出会った」


吉田「石田さんの世代では起業はかっこいいことなのか?」


石田「かっこいいというか、やりたいこと」


吉田「皆、起業したほうがいいと思う。俺の時代、起業は非常に縁遠いものだった。今は皆やっている。もっともっとやったほうがいいと思う。鶴田さんは最初から企業というかんじだったの?」


鶴田「ものを作るのが好きで …それが企業になると2004年くらいに気付いた。今も根っこはクリエーターだと思っている」


司会「企業するためには実際にサービスを作らないといけないが、自分でものを作れるのは… 鶴田さんだけですよね? 自分でできる場合とできない場合で苦労が違うと思うのですが」


鶴田「今まで30くらい作ってきたが、苦労は …今までだと、着想から作るまでが短く、必要なスキルを一晩で覚えて作ったり、短期集中でやってきたが、すごい時間割りでは一行もコードを書いていない。

自分で作れる経験があると舵取りもぜんぜん違うという実感がある」


石田「ウェブで完結しないサービスだから僕の存在意義がある、そういうモデルをたまたま作れてよかった。そうでなかったら僕の存在意義はなかった。

CTOには毎日怒られたが、彼の力は大きかった。非エンジニアCEOの全員にあるかはわからないが、僕には超えなければいけない壁があった。

これでいいじゃん!と作って、そこにユーザがなかった。エンジニアリングはそうではなくて、何がユーザのニーズとして正解か、という思考がある。(昔は)それがなかった。サービス提供者としては失格だった」



◇どういうビジネスモデルを考えていたか

司会「どんなビジネスモデルを、どのように立案しましたか?」


吉田「まあ、わりとシンプルで。(サラリーマン時代は)営業をしていて、エンジニアの作ったものを売り込むのは割と楽しかった。その中で、沢山のエンジニアと仕事をした。

そして、沢山のエンジニアの売り込みをしたいというのをテーマとしてもっていた。5年くらいそのテーマで考えていた。で、海外でクラウドソーシングのアイデアをみてこれだと思った。

作ってみて意外だったんだけど …海外のクラウドソーシングはエンジニアを機械として使うという発想があるらしく、クラウドという言葉がエンジニアに評判が悪かった。

だが、逆にチャンスだと思った。海外ではサプライサイドに偏っているが、こちらはエンジニアに喜んでもらえるようにすればよいのではないか?と思った」


司会「先ほどの話では受注側に課金するという話でしたが、最初から狙っていたのですか?」


吉田「いろいろサービスをやってきたが …2者からお金を取るサービスはうまくいかないという原則がある。

(クラウドワークスは)エンジニアに貢献しようと思っているのだから、(クラウドワークスが)貢献しているエンジニアからもらうのが当然だと思った。エンジニアに利便性を提供するのだから、企業は無料である。

この人に価値を与えるのだからこの人からお金をもらう、という原則は崩したくない」


鶴田「大学生とつながりたい企業は沢山ある。そこに価値を提供できるのではないか?というのがある。ただ、具体的なビジネスモデルはない。

時間割りだから毎日使うだろうというのがあるし、ターゲッティングがすごいので、特定の大学とか履修傾向とかでいろいろ配信することができるのではないか?と思っている」


司会「儲けを出していくのは?」


鶴田「これから。いろいろ水平展開できるのではと思っている」


~中略~


吉田「今はお金は余っていて、どちらかというと人に主軸が移ってきている」


司会「これは質問の中にあったんですが、儲かっていますか? という話。企業してうまくいったら、めちゃくちゃ金持ちになるんじゃないか? とか、(既に)なりかけているとか …あると思うんですが」


鶴田「今は売り上げは0ですけど、9月までには黒字転換する予定。何らかの形でこの夏に収益を出そうと思っている。

今は学生に強みがあるけど、たまたまそうなっているだけ。いろいろなサービスを生み出していきたいと思っている。何か安定事業を作ってから新規事業を次々と立ち上げたい」


石田「うまくいっているの意味はよくわからないですけど …死んでないからうまくいっているのではないでしょうか? 成功が何かもよくわからないし …旅をして喜んでくれるユーザさんがいるので、うまくいっているのではないかと。喜んでくれるユーザがいるので、僕はうまく言っていると信じたい」


司会「今後収益を増やすとしたら …旅を増やすとか単価を増やすとか?」


石田「そこはいろいろ考えている」


米重「vingowというサービスは1円も収益を生み出していない。今後の半年もそんな感じ。広告・課金・APIといったビジネスモデルを考えている。vingowはすごくデータが取れる。有償のAPIでいけるのではないか?といったことや、vingow自体にもっと便利な機能を載せてプレミアムモデルというのも考えている。収益については …儲かっているわけではないけど、潰れそうなわけではない」



◇チームや採用について。どういう風に向かい入れていたか?

吉田「twitterやwishScope経由で」


米重「弊社はエンジニア4名。デザイナー2名。友人のつながりで。けっこう近い人間関係の中で広がった。twitterやwishScopeのようなつながりではない。ソーシャルメディアはちょっと怖いというのがある」


石田「最初の最初は1人。こういうのをやりたいんだというのをつぶやいたり、知り合いを口説いたり、いきなり上京してきたりとか、よくわからない」


司会「twitterはフォロワではなくて、リツイートとか」


石田「それは覚えてないなー」


司会「バンドをやろうと思ってつぶやいたことがあるが、ふざけた人しか集まらなくて …何かあるのでしょうか?」


石田「いろいろつぶやいていた。熱があった、これはやりたいというのはとにかく譲らなかった」


鶴田「web幼なじみが、だいたい同じようなキャリアなので誘った。バンド時代に同じメンバーだった人がSIerをやっていたので引っこ抜いた。最初はシェアオフィスだったので、同じ部屋にいた別会社の人を、(その人の)退社を機に誘ったりした。僕にはエンジニアの知り合いが多い。相手にあわせてタイミングを見て誘った」


司会「シェアオフィスは横のつながりは増えますか?」


鶴田「情報交換はすごいする。あの会社が資金調達するらしいとか …僕の会社は向いていないと思ってでた。みんな若いので音楽をガンガンかけたりしている」


吉田「うちはインキュベーションオフィスなので、あまり音は出せない。あと …(そういう環境から、いわゆる)会社の中に入るエンジニアも何人か知っている」


司会「少人数なので毎日顔を合わせると思います。モチベーション管理などは?」


米重「デザインはできるが、コードはかけない。私はエンジニアではない。彼らの心理はよくわからない。わかろうとして勉強したこともあったが、なかなか難しい。

彼らの話をひたすらきいて、置物になってやるような感じになっている。とにかく彼らのペースに合わせている。

こういうビジネスモデルに向けて、こういう将来像に向けてやるんだという話はとにかくしているが、それ以外のことについては …自立した人が集まってくれたおかげ」


石田「旅に行ってくれっていってます。疲れたら旅に行ってくれといっている。エンジニアはなかなか行きたがらないのだが …あと合宿を2ヶ月に一度くらいやっている。合宿はモチベーションがあがりすぎて次の日がつらいというのがあるが、モチベーションをあげるにはよい。仕事をしてご飯を食べながらとか。場所が違うというのはそれだけ刺激になる」


吉田「一番いいモチベーションはでかい夢を共有していることだと思う。2年くらい前だが、社員に謀反を起こされた。自分の強みが生かせる先に人を引っ張っていくのじゃないと、こういうことになるのだなと …会議は3回くらいしかしていない。Redmineで情報共有はしているが、会議はほとんどしていない。夢を見せ、それを共有している。夢はわかりやすいものにしている」


鶴田「うちの開発体制はアジャイル・スクラム・リーンでやっている。3ヶ月で体制ができ、一週間でリリースできるようになった。

で、自分は会社に泊まりこんでいたのだが、毎日5, 6人で寝泊りしているとプライベートな話とかしなくなる。みんな常にいるので個人と個人で話す場がなくなる …なので、メンバーをシャッフルしてランチとか合宿とかをしている。

また、開発が大変な時期、目の前のタスクに追われているときは、実際のユーザとの対話の機会を増やす、というのをやっている。人に使ってもらっているというのを知ってもらうきっかけにしている。

自分はともかく、社員はなかなか外にいけないので、会社にゲストを呼んでいる。

あと、みんなプライドがあるので、取り組みがなかなか進んでいないときに抱え込んでしまうことがある。それは個人ではなくチームの問題とするようにしている、それを朝会で出してもらっている。

半年くらいは試行錯誤した。1人で作るのと5人で作るのでは全く違う。5人ひとつの頭脳を持つというのを考えている」


吉田「うちはすごい課題になっていて …すべて全員が認識している感じ?」


鶴田「全員。うちはスクラムでやっているので。人数が増えたときにどうなるかというのは、これから」


吉田「例えばUXだと、全員が同じ時間触らないと共有できなかったりするが?」


鶴田「少人数のチームだと全員で意思決定することがあるけど、それだとすごい遅くて …三人くらい選んで別室で話をしてもらうと15分くらいで決まる」



◇作るにあたっての技術、広げるためのプロモーション

司会「最初はどのくらい投資して、どのようにスケールさせたか?プロモーションの方針や『これが効いたぞ!』というのを教えてください」

吉田「初期投資の基本は持ち出し。生活に余裕がある限りはお金を受け取らないという。メンバー全員にどれくらい余裕があるか聞いた。

今の時代は個人が強い。なるべくイベントとかに顔を出して、そういう人たちに共感してもらう。リスティングにお金を突っ込むより、個人につぶやいてもらうほうが効果が高い。うちはリスティングよりは実際のイベント、インフルエンサーと話すというのをやっている」


米重「プロモーションは …いまはオープンベータでやっていて、景品代くらい。TechCrunchに書いてもらい、そこから興味を持ってもらってというのがあって …出向いて書いてもらうというのはあるが、それ以上はやっていない」


石田「僕らはまだアルファ版をうたっている。知らない人と旅にいくというサービスが世の中になくて、まだ調べている段階。初期投資はまだ続いている段階。プロモーションは特にやっていることはない。僕自身がイベントに出たり、メディアの人と親しくなって書いてもらったりしている」


鶴田「学生向けのアプリというのがあるが …プロモーションは口コミが多い。口コミのためにメディアをうまくつかっているというのはあるが、大学生はメディアを見ていないというのがある。外的なプロモーションよりは、(アプリの)中にバイラルする仕組みとか。1人使ったら1人以上使う仕組みにすれば5000人くらいから勝手に広まるのではないかというのがある。あと、学生サービスなので、学園祭とかとバーターでやっている。他の大学に宣伝する代わりに広告を出してもらったりとか。サービスにあわせた工夫をする必要があると思う」



◆質疑応答

・鶴田氏がコードを書かないのは、敢えてそうしているのか?

鶴田「単に自分より優秀なエンジニアがいるのがひとつ。全体を見る必要があるかな? というのもある。それに、全体を見ていてほしいとエンジニアからも言われる。そういう役割が必要」


・たくさんの機能を開発できない中で、何を基準に機能や仕様を絞り込んだのか?

吉田「うちはシンプルなので …個人以外はかなりそぎ落とした。ただ、将来的にはグループでも仕事を進められるようにしようとはしている」

米重「『一言でいうと新しい新聞です』と言えるような機能は作った。で、画像は後回しにした。コンセプトから逆に、まず作る機能などを決めた」

石田「ユーザやペルソナが欲しがっているもの。とりあえずこれがあれば実現できると言われたような気がしたもの。それが分からない場合は、仮説をたててその真髄を取り出し、それを機能化した」






Web CAT Studioの皆様、吉田様、米重様、石田様、鶴田様、ありがとうございました。

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